ブロック塀は非常にポピュラーですが、オープン外構の普及と共に見る機会が少なくなったように思えます。
しかし、新しいブロック塀を見かけることもあるので、需要はまだあると言えるでしょう。
ブロック塀は単純にコンクリートブロックを積み上げて作る塀に見えるかも知れませんが、実は違います。
ここではブロック塀について取り上げ、メリット・デメリットや工事を中心に紹介します。
ブロック塀とは

ブロック塀はコンクリートブロックで組み立てた塀を指します。
基礎を築いてブロックを積んで作るのですが、中には補強用の鉄筋を仕込みます。
この鉄筋によってブロック塀全体が補強されて安全に使えるのです。
ちなみに、ブロック塀に加わる外力は様々です。
地震の影響もダイレクトに受けますし、台風などの強烈な風もあります。
他にも人が寄りかかることもありますし、車が衝突することもあるでしょう。
ブロック塀はこれらの悪条件から家を守ります。
ブロック塀の規準
ブロック塀に関しては日本建築学会では建築基準法を補足するものとして「コンクリートブロック塀設計規準」を制定してあります。
この規準によるブロック塀の壁厚と高さは次の通りです。
| ブロックの厚さ(cm) | 塀の高さ(m) |
| 15以上 | 2.2以下 |
| 12(10)以上 | 2.0以下 |
※()内は建築基準法による
ブロック塀の受ける外力について
ブロック塀の受ける外力について少し述べましたが、ここではその外力について踏み込んで説明します。
地震
地震は上下左右の各方向に発生する力です。
状況にもよりますが、衝撃力として加わる場合も少なくありません。
地震のような振動は重量のあるもの、高さのあるものの方が影響を受けやすいです。
これはブロック塀においても同じで、高さのある塀の方が重量はあるので地震の影響を受けてしまいます。
ちなみに、今のブロック塀は中に鉄筋が入っていますが、昔のブロック塀は入っているとは限りません。
そのため、強度において乏しい場合が多く、倒壊の危険性が高いのです。
風圧力
風圧力は台風や春一番などの突風による外力です。
風圧力は衝撃力として加わることは少ないですが、加わる力は非常に大きいです。
そのため、台風が頻繁に来る地域では注意が必要となります。
ところが、最近の台風は大型で強い場合が少なくなく、家屋の屋根が剥がされる事故がたびたび起きています。
この条件はブロック塀も同じです。
大きな力が塀全体に加わり、倒壊の危険性があります。
ちなみに、塀の受ける風圧力は、塀が高くなればなるほど風が受ける面積が大きくなるので強くなります。
そのため、高いフェンスほど危険性が増します。
古いブロック塀で控え壁が付いていない場合には、特にリスクが大きくなるでしょう。
人が寄りかかった場合
人が寄りかかったりする場合もあります。
ただ、この時の外力としてはそれほど大きなものにはなりにくく、影響はそれほどないと考えられます。
車などの衝突
車などの衝突の可能性もあります。
外力の大きさとしてはトップクラスと言えるでしょう。
車の衝突は衝撃力として加わるので非常に危険です。
衝突の条件にもよりますが、ブロック塀が破損する場合も少なくありません。
ブロック塀の装飾について
一般のコンクリートブロックはデザイン性に欠けるのではないでしょうか。
無味乾燥な上、表面には装飾が施していないからです。
そのため、ブロック塀もデザイン的には面白みがありません。
しかし、ブロック塀には装飾の手段があります。
ここでは、ブロック塀の装飾方法について取り上げましょう。
装飾全般において覚えておきたいこと
装飾全般に言えることですが、トータルコーディネートを意識することは非常に大切です。
全体がデザイン的に統一していなければ不格好となってしまうからです。
例えば、シャープな装飾をしたブロック塀にレトロなデザインのフェンスを張ったらどうでしょうか
そのような場合は統一性が乱れてしまい、見た目が悪くなることでしょう。
ちなみに、デザインのコーディネートを決める場合にはコンセプトを決めた方が良いです。
仕様を決める前の決定をおすすめします。
化粧ブロックの使用
化粧ブロックはブロック表面にデザインを持たせたものです。
このブロックを使うとオリジナリティ溢れるブロック塀が作れます。
また、化粧ブロックにはカラーバリエーションもあり、好みのタイプを選ぶことも可能です。
デザイン性の高いフェンスと合わせて使うと、おしゃれな塀が作れます。
花ブロックの使用
花ブロックは透かしブロックとも呼ばれるブロックです。
デザインバリエーションが広く、組み合わせ次第で様々なテイストの塀を作ることが可能となります。
特に、シャープなデザインが多いので、モダンな外構を作りたい時におすすめです。
ただし、使い過ぎると耐震性に影響が出ます。
強度のチェックを確実にした工事が必要となるでしょう。
塗装
塗装もおしゃれな塀を作る上で有効な手段です。
特に、テクスチュアに装飾を施した塗装は表面が面白くなります。
モダンに作ることもレトロに作ることも可能です。
レンガやタイルなどの貼り付け
ブロック塀はレンガやタイルなどの別の素材を貼り付けることが可能です。
別な素材を貼り付けると、ブロック塀が全く異なるデザインになります。
例えば、テラコッタ調のタイルを貼り付けると、塀全体がレトロな雰囲気に変わります。
古いヨーロッパのデザインをあしらった鋳物フェンスが似合うことでしょう。
ブロック塀のメリット

ここではブロック塀のメリットとデメリットを挙げてみます。
まずはメリットについて取り上げます。
隣地との間仕切りになる
ブロック塀は隣地との間仕切りになります。
隣地との間仕切りは非常に重要です。
自宅として使えるテリトリーが曖昧だと、どこまで使用が可能か分かりません。
そして、仮に隣家のテリトリーに侵入した場合にはトラブルになり得ます。
例えば、庭木の枝が茂ってしまい、隣家に侵入することがあるかも知れません。
その時、自宅のテリトリーがはっきりしていれば、どの位置で枝を打つべきか明確になるでしょう。
ただし、ブロック塀は隣地境界線を示すとは限らないので注意が必要です。
フェンスの設置が可能
エクステリアメーカーの販売する住宅用のフェンスは、基本的にブロック塀への施工を前提としています。
フェンスの支柱をブロック塀の穴に差し込んでモルタルで固定し、その支柱にフェンスを取り付けるのです。
高い耐久性
コンクリートブロックは高い耐久性を持ちます。
隣家との間仕切りにはフェンスも使われますが、アルミのフェンスでもスチールのフェンスでも経年劣化が進みます。
条件にもよりますが、風雨などの影響によって、早い内にボロボロになるかも知れません。
その点、ブロック塀は金属のように腐食することがないので、フェンスなどよりも長く使えます。
ちなみに、ブロック塀には鉄筋が入っていますが、その鉄筋はブロック塀にヒビが入ったりしなければ基本的には錆びません。
これは、鉄筋の周囲のモルタルは高いアルカリ性だからです。
鉄は高いアルカリ性の場合は表面に薄い被膜を作り、腐食はその内側まで進行しないのです。
プライバシー保護に役立つ
ブロック塀はプライバシー保護に役立ちます。
ブロック塀は道路と敷地の間仕切りです。
設置すれば敷地外から中が見えなくなります。
特に、今は大型のサッシで家を開放的にしています。
そのため、状況によっては敷地外から家の中まで丸見えになってしまうのです。
しかし、ブロック塀で敷地を囲えば外から敷地の中が見えなくなるため、プライバシーは確保されます。
メンテナンスがあまり必要ない
コンクリートブロックはメンテナンスをあまり必要としません。
コンクリートは素材そのものが頑丈ですし、モルタル中の鉄筋も腐食しないからです。
その点、金属製のエクステリアは掃除が必要です。
掃除をしなければ腐食してしまうこともあるのです。
防火に有効
コンクリートは無機質の素材です。
そのため燃えにくく、防火に有効なのです。
火災と聞くと自分の家からの出火を連想するかも知れませんが、そうとばかりは言えません。
外からの延焼も考えられます。
そして、その場合には隣家との間仕切りが燃えるか燃えないかで、被る影響が変わります。
防火に有効なブロック塀は延焼を防ぐのです。
自動車の追突から家を守れる
前述のようにブロック塀には自動車が追突することがあります。
その場合、ブロック塀の部分で車は停止します。
間仕切りがオープン外構や弱いフェンスだと、その部分を破って家屋に突っ込むかも知れません。
ブロック塀だからこそ家屋を守れるのです。
ブロック塀のデメリット
それでは、ブロック塀のデメリットにはどのような点があるのでしょうか。
汚される可能性がある
ブロック塀は落書きなどで汚される可能性があります。
家の中から塀の外までは目が届かないので、汚されても気付けないのです。
汚れには落ちにくい頑固なものもあり、非常に厄介です。
閉塞感がある
敷地をブロック塀で囲ってしまうと閉塞感が出て来ます。
これは塀の持つ視覚的な効果によるものです。
目の前に視界を遮るものを立てると閉塞感が出てしまうのです。
この反対に、塀で囲わないオープン外構はブロック塀で囲うような閉塞感はありません。
風通しが悪くなる
風通しが悪くなるのもデメリットです。
ブロック塀は完全に囲ってしまう塀なので、風も通さなくなってしまいます。
そのため、空気がよどんでしまったり、ジメジメしたりする場合もあるのです。
なお、風通しを良くするためには花ブロックを使う手段がありますが、花ブロックを使い過ぎると強度に影響するケースがあります。
使用には注意が必要となるでしょう。
日当たりが悪くなる
ブロック塀を設置すると日当たりが悪くなってしまいます。
特に、2mクラスの高い塀を建てた場合は顕著です。
ガーデニングをしている場合などは、日光が入りにくくなってしまい、植物の生育にとって悪い環境となってしまうのです。
また、隣家の日当たりにも影響します。
その場合には隣家とトラブルになるかも知れません。
防犯性に問題が出る可能性がある
ブロック塀は侵入者を阻みます。
高い塀であれば乗り越えることも難しいでしょうし、人目に付くのでまずおこないません。
侵入者は発見されるのを恐れるからです。
しかし、一旦乗り越えられると外から見えなくなるので危険です。
侵入者に隠れる場所を与えてしまい、犯行に及ぶ機会を与えてしまうのです。
地震で倒壊する危険性がある
古いブロック塀は地震で倒壊する危険性があります。
古いブロック塀は鉄筋が入っていない場合や、地震などでヒビが入っている場合があるからです。
そのヒビに雨水が侵入すると、雨水が鉄筋を腐食させてブロック塀の強度を著しく落とすので危険です。
また、モルタルはアルカリ性ですが、空気中の二酸化炭素と反応して中性に傾いてしまいます。
そうすると鉄筋の腐食が始まります。
ブロック塀の強度が落ちてしまい、倒壊の危険性が考えられるのです。
それでは、どのような庭にどのような砕石が合うのでしょうか。
ケース別に挙げてみましょう。
ブロック塀の工事の流れ

ブロック塀について知るためには工事の方法を知っておくと良いでしょう。
そこでブロック塀の工事について、まずは工事の流れについて取り上げます。
ブロック塀の工事は大きく分けて4つの段階を踏みます。
採掘工事
ブロック塀を作るためには十分な強度の基礎を作らなければいけません。
また、基礎の強度の確保のためには、適切な形状と深さが必要です。
採掘工事は基礎を作るために地面を採掘する工事です。
ブロック塀の長さの分だけ掘る計算になるので、時として大きな工事にもなります。
既存構造物撤去工事
現場によってはフェンスなどが建っている場合があります。
リフォームなどの場合には、そのような構造物を撤去しなければいけません。
既存物撤去工事はそのような場合に行われます。
どのような構造物は残っているかはケースバイケースで、それによって工事規模も異なります。
コンクリート基礎の工事
コンクリート基礎を作るためには採掘した部分に砕石を敷いて転圧し、その上で基礎を作ることになります。
基礎は鉄筋を入れて補強します。
ブロック塀そのものの工事
ブロック塀の工事はブロックをモルタルで重ねて積み上げますが、塀の中に鉄筋を入れながら行います。
また、現場によっては控え壁の施工も併せて行います。
ブロック塀の工事費用について
前述の通り、ブロック塀の工事は4つの段階です。工事費用はそれぞれの段階の合算となります。
以下に工事の4つの段階と費用を記します。
- 採掘工事:10,000~30,000円
- 既存物撤去工事:5,000~10,000円/㎡
- コンクリート基礎の工事:14,000~20,000円/㎡
- ブロック塀の工事:9,000~12,500円/㎡
DIYでブロック塀は作れるか
結論から言うと、ブロック塀のDIYでの工事は非常に困難です。
前述のように、ブロック塀には基礎が必要です。
DIYのレベルでは基礎を築くのは簡単ではありません。
また、ブロック塀には鉄筋工事も不可欠です。
鉄筋の工事も個人レベルでは荷が重いことでしょう。
そしてモルタルの施工も技術が意外と必要です。
ちなみに、これらの施工がいい加減だとブロック塀の倒壊にも繋がります。
非常に危険ですので、専門業者へ相談して依頼することをおすすめします。
ブロック塀の耐久性が疑問視される理由

ブロック塀は非常に耐久性の高い塀です。
しかし、ブロック塀の中には耐久性が疑問視されるケースもあります。
一般のブロック塀は地震にも強風にも耐える構造物です。
しかし、ブロック塀にも耐久性が懸念されるケースがあります。
疑問視される主な理由は次の3点です。
- 鉄筋が入っていない
- 破損による劣化
- 規格通りに作っていない場合
ここではそれぞれのケースについて解説します。
ブロック塀が危険視される理由1:鉄筋が入っていない
ブロック塀は危険視される傾向が強いのですが、これには理由があります。
というのも、過去の大地震でブロック塀の下敷きになって死んだケースが多く見られたからです。
これは1978年に発生した宮城県沖地震で、多くの被害がありましたが、特に目立ったものはブロック塀倒壊による事故でした。
多くの人が倒れて来たブロック塀の被害に遭ったのです。
これを受けてブロック塀には鉄筋を入れることになりましたが、古いブロック塀には鉄筋が入っていないことも多く危険です。
ブロック塀が危険視されているのは、このような背景があるからなのです。
ブロック塀が危険視される理由2:破損による劣化
ブロック塀には補強を目的とした鉄筋が入っています。
この鉄筋は前述の通り、基本的にはモルタル中では腐食しません。
しかし、ブロック塀にヒビが入った場合には話が違って来ます。
と言うのも、ヒビの部分で露出した鉄筋が、入り込んだ雨水で腐食することがあるからです。
鉄筋はモルタル中ではサビません。
しかし、地震などによってモルタルにヒビが入り、そこに雨水が入るとその部分から腐食が始まります。
そして、その部分から強度が落ちてしまい、倒壊などのリスクに繋がるのです。
ブロック塀が危険視される理由3:規格通りに作っていなかった場合
ブロック塀は全部が規格通りに作っているとは限りません。
例えば、規定よりも細い鉄筋を使っていたり、控え壁を適切に配置したりしていない場合などが挙げられます。
その場合には想定通りの強度がないので危険です。
ちなみに、仮に鉄筋が規定よりも少なかったとしても、施工後には中まで見えないので不具合は分かりません。
古いブロック塀の撤去について
古いブロック塀は問題を抱えている場合が少なくありません。
度重なる地震、台風などによる外力、また、日射や降雨などによる化学変化などに遭遇し、多くのダメージを受けているケースが考えられるのです。
そして、そのようなブロック塀には倒壊などの危険性があるのです。
そのため、状況によっては撤去が推奨される場合があります。
そのような工事に関しても解体費用が必要です。
しかし、撤去費用の助成を行っている自治体もあるので、確認してみるとよいでしょう。
ブロック塀の破損と火災保険
ブロック塀が破損した時には火災保険で修理可能な場合があります。
塀の修理費用の捻出に役立つことでしょう。
ただし、保険は契約によって補償の範囲が異なるので注意が必要です。
まとめ
ブロック塀の工事について取り上げました。
ブロック塀について、メリット・デメリットなども併せて分かったことと思います。
また、工事の流れのイメージも掴めたのではないでしょうか。
ブロック塀は外構における重要な部分です。
正しく施工をして、安全なブロック塀を作りましょう。










