「旗竿地」と呼ばれる土地をご存じでしょうか。

台形でも三角形でもない形状で、旗のような形の土地です。
土地の形状が特殊なことから、エクステリアの条件も変わって来ます。

では、旗竿地の場合の駐車場はどのようになるのでしょうか。

この記事では旗竿地を取り上げ、駐車場にどのような工夫ができるかを解説します。

旗竿地とはどんな土地か

旗竿地とはどんな土地か

まずは旗竿地について紹介します。

どのような特色があるのでしょうか。

四角い土地と細長い土地が接続した形の土地

旗竿地とは四角い土地の端に細長い土地が接続した形の土地です。

上から見ると広げた旗を竿の先に付けているイメージの形状になっています。
入って行く人の目からすれば、細い通路を入って進むと四角い土地に至るように、住宅は四角い土地の部分に建てます。

また、通路部分の幅は2m以上です。
通路部分の幅が2m以上というのは建築基準法で定められている規定になります。

仮に2m未満であれば再建築不可となり、住宅を新たに建てることは法的に不可となります。

都市部によく見られる

旗竿地は都市部によく見られます。

不動産会社が大きな土地を購入し、住宅用に成形地と旗竿地に分けるケースが多い様子です。

例えば、不動産会社が廃業した工場の跡地を買い取り、宅地用途として成型地と旗竿地をいくつかに分けて販売します。

1,000㎡であれば、100㎡の成形地×4区画と150㎡の旗竿地4区画に分けられるイメージです。

旗竿地の駐車場のパターン

旗竿地の駐車場のパターンは2つあります。

1つ目が旗竿地の通路の部分に車を駐車するパターンです。
2つ目が土地の奥の広い敷地に停めるパターンです。

通路部分に駐車をするパターンでは、通路の長さによって停められる台数が異なります。

敷地の条件にもよりますが、複数台の車を停められる場合も少なくありません。

車の停め方は縦列駐車のイメージで、前後方向に車が並びます。

一方で土地の奥の敷地に停めるパターンは敷地の奥に駐車場があります。
ただし、今ではあまり見られません。

旗竿地のメリット

それでは、旗竿地にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

土地が安い

まず挙げられるのが「土地が安価」な点です。

土地の価格を決める条件は様々です。

例えばどの街にあるか、駅からどれくらいの距離かといった条件もあるのですが、旗竿地は成形地よりも安い場合が多いです。
100㎡の成形地×4区画と150㎡の旗竿地4区画の例で言えば、成形地が坪50万円、成形地が坪40万円、となるイメージです。

ちなみに、首都圏の場合には坪単価が100万円を超える土地が珍しくありません。
成形地と旗竿地では価格の差は歴然となります。

騒音や振動が軽減される

旗竿地は騒音や振動が軽減される場合が多いです。

これは道路から離れていることと、周囲が住宅で囲まれている場合が多いからです。

音は蔽物があると減衰します。
つまり、道路に面している家が騒音を遮断して旗竿地側は静かになるのです。

また、振動は道路から離れるとそれだけ減衰します。
道路から離れる旗竿地は振動の面でも有利なのです。

子供の道路へ飛び出すリスクが低くなる

大都市の狭小地住宅の場合などは、玄関アプローチの距離が非常に短い場合が少なくありません。

玄関ドアを開けて数歩で敷地の外に出ることも珍しくないのです。

そのため、小さな子供の交通事故リスクが考えられます。
玄関を飛び出した途端に車が来るという危険性があるのです。

その点、旗竿地の場合は玄関ドアから敷地を出るまでに一定区間の距離があるため、交通事故のリスクがグンと減ります。

玄関を仮に飛び出したとしても、そこは敷地の内側です。

駐輪場としても使える

駐車場に余裕があれば駐輪場としての活用も可能です。

都市部の狭小地住宅などは駐輪場の確保が難しい場合が少なくありません。

家屋と境界部分の隙間に無理矢理自転車を置くケースも見られるほどです。

世帯によっては自転車を増やすことを諦めているかも知れません。

その点、旗竿地であれば駐車場に余裕さえあれば駐輪場としての活用も可能です。
特に、複数台の自転車を持つ世帯にとっては非常に役に立ちます。

ユーティリティスペースになる

旗竿地の通路部分はユーティリティスペースとして活用も可能です。
旗竿地の大きなメリットと言えるでしょう。

ユーティリティスペースとしての活用方法は様々です。
例えば、子供の遊び場として使用することも可能です。
特に大都市圏の住宅街では子供の遊び場に困ることも少なく、思い切り遊ぶことができない場所も多いです。
その点、自宅に遊び場があれば安心して遊ばせられます。
夏場などに子供用のプールを出して遊ばせることも可能な点は、旗竿地ならではのメリットです。

旗竿地のデメリット

次に、旗竿地のデメリットを取り上げましょう。

日当たりが悪くなりがち

旗竿地は周囲に家が建っている場合が多いです。

そのため、それらの家の陰になりやすく、全体的に日当たりが悪くなりがちです。

特に1階部分は周囲の陰になりがちで、窓やバルコニーなどを工夫して採光することになります。

風通しが悪い

旗竿地は周囲の建物のために風通しが悪くなることが多いです。

そのため空気がよどんでしまい、ジメジメしがちです。

洗濯物の乾きなどにも影響しそうです。

閉塞感を感じる場合がある

旗竿地の住宅は周囲が囲まれているので、閉塞感を感じる場合が多いです。

また、隣の家が至近距離にあるので目隠しフェンスなどを設置する場合もあり、そのフェンスで更に閉塞感を感じます。

プライバシー保護の点で難アリ

旗竿地は隣の家に囲まれています。
そのため、プライバシー保護の点で不利です。

例えば、窓の位置によっては家の中が見えてしまうかも知れません。

特に、リビングに大きな開口のサッシを設けた場合などは、リビングまで見られる可能性があるのです。

また、生活音も聞こえる可能性があります。
夏場に窓を開けておくと、その窓から聞こえるかも知れません。

このように、生活が見られたり聞かれたりする点は大きなデメリットです。

駐車が大変な場合がある

旗竿地でも通路部分が狭くなると駐車が大変になる場合があります。

特に、接している道路が狭い場合などは運転にも技量が必要となるでしょう。

また、複数台の車を長い通路部分に停める場合には縦方向に駐車をしなければなりません。
後ろの車を出すためには、前の車を一旦外に出さなければならず大変です。

ちなみに、ドライバーが一人しかいない場合、最初に前の車を一旦出して後ろの車を出し、その上で前の車を戻さなければいけません。
車から車に移動しなければいけないので大変です。

駐車可能な車種が限られる場合がある

前述のように、旗竿地の通路部分は2m以上の幅があれば成立することになります。

つまり、2mの幅であっても作れるのです。

しかし、車の幅は2mとは限りません。
特に外車の場合は2mを超える車種が多く、駐車ができなくなります。

なお、通路の幅が2mの土地を購入した場合、車の車幅は2m以下でしか駐車できません。

仮に車を買い替えようとしても、車幅から購入する車種を決めることにもなります。

旗竿地の駐車場でできる工夫

旗竿地の駐車場でできる工夫

旗竿地にはその特徴から、可能なことと困難なことがあります。

しかし、その様に発生する制限の中であっても工夫できる余地はあります。

では、旗竿地で可能な工夫にはどのような事例があるのでしょうか。

ここでは「おしゃれ」と「実用性」をキーワードにした工夫について紹介します。

植栽を取り入れる

植栽を取り入れると外構が生命感で溢れるため、全体が面白くなります。

例えば、シンボルツリーを植えるとツリーの周囲が生命感で溢れ、駐車場の雰囲気まで明るくなります。

また、ツリーの種類によっては四季の変化を楽しむことができるでしょう。

他にも、低木を通路の脇に飾るのも良いと思われます。
通路全体が美しくなり、面白いです。

ただし、通路には車が入らなければいけません。
通路の幅を確認しながら飾ることになるでしょう。

路面にこだわる

路面のデザインや素材にこだわってみるのも、駐車場を飾る上で有用です。

外構に使える素材には、レンガやタイル、そして石材などがあります。
それらを組み合わせて使うと、駐車場部分がおしゃれになるのでおすすめです。

また、他のエクステリアと組み合わせると統一性が出て、ファッショナブルになります。

例えば、レトロな雰囲気のレンガや石材に曲線を多用したフォルムのエクステリア製品を合わせれば、柔らかな雰囲気の外構ができます。
そこから植栽を加えれば、温かで素敵な駐車場となるでしょう。

機能門柱にこだわる

機能門柱にこだわるのも、外構がおしゃれになるのでおすすめです。

特に、ウッド系の機能門柱やテラコッタ調に表面を仕上げた門柱は、駐車場の雰囲気作りに役立ちます。

逸品物の門柱であれば、オリジナリティも溢れることでしょう。

また、機能門柱に設置する照明器も工夫をすればおしゃれになります。

例えば、表札をオレンジ色の間接照明で照らすテラコッタ調の門柱はどうでしょうか。
オレンジの柔らかい光が表札を優しく照らし、全体を温かい雰囲気で包み込む空間になることでしょう。

デザイン重視のフェンスを設置

通路部分の脇をフェンスで飾るのもおすすめです。
路面の素材や植栽に合わせて選ぶと良いでしょう。

例えば、シャープなイメージのタイルを使った場合には、シャープな感じのアルミ製のフェンスが合います。

また、レンガや石材などでレトロな雰囲気を演出するならば、曲線をフォルムとした鋳物フェンスがおすすめです。

ちなみに、通路部分のエクステリア以外の部分と合わせると、全体が一層おしゃれになります。

住宅全体のトータルコーディネートができると、非常に魅力的な生活空間となるでしょう。

照明にこだわる

おしゃれなエクステリアを考えるならば、昼間の景観だけでなく夜の雰囲気も考えたいものです。

夜のエクステリアを決めるのが照明です。
おしゃれに飾った通路部分を素敵に照らしてくれます。

例えば、高めのシンボルツリーをライトアップしてみたらどうでしょうか。
また、おしゃれに飾った路面をオレンジの間接照明で照らすのも良いでしょう。

いずれの場合も夜間のエクステリアをファッショナブルに演出してくれることでしょう。

ただし、照明は単に明るくすれば良い訳ではありません。
暗い部分とのコントラストを意識することが大切です。

目隠しフェンスを設置する

前述のように、旗竿地にはプライバシー保護の点で弱点があります。
実用性を高めたいのであれば、その弱点をカバーする工夫が必要です。

その工夫の例が「目隠しフェンス」の設置です。
目隠しフェンスは通路全体を隠すので、プライバシー保護に有用です。
目隠しフェンスはアルミ形材製が多いのですが、形材の組み合わせによって、表面に意匠が設けられています。

また、表面にスリットを設けられて、通風が出来るメリットがあります。

ちなみに、目隠しフェンスはコンクリートブロックに建てた場合、ブロックの高さと合わせて2.2mが上限です。

カーポートを設置する

カーポートは雨や雪が降っても濡れずに済むメリットがあります。
特に、雪の日の朝などは雪かきの必要がないので重宝することでしょう。

また、今のカーポートはファッショナブルなタイプもあり、設置によって通路全体のデザイン性も向上します。

ただし、カーポートには積雪強度があるため、どれでも設置ができる訳ではありません。

例えば、一般地域であれば積雪20センチのタイプでも良いのですが、豪雪地帯はそれではいけないのです。

カーポートを選ぶときには、デザインだけでなく、強度の確認もしましょう。

自宅用EV充電スタンドを設置する

二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの抑制が叫ばれている今、電気自動車の普及は急務と言えるかも知れません。
ガソリンが高騰している現状では、なおさらのことでしょう。

そこで検討したいのが自家用EV充電スタンドの設置です。

自宅に充電スタンドがあれば、電気自動車の使用に困ることも少ないと思われます。

電気自動車には補助金があります。
ガソリン車から変更するならば、経済的なメリットが大きいかも知れません。

自転車スタンドの設置

自転車スタンドの設置もおすすめです。
自転車スタンドがあれば、自転車を強風から守れるからです。

立てただけの自転車は風に弱く、簡単に倒れてしまいます。
その結果として自転車は傷だらけになることもあり得ます。
自転車を大切にしている人にとっては、非常に残念なことでしょう。

その点、自転車スタンドがあれば自転車をしっかりと固定するため倒れません。

物置などの設置もアリ

小型であれば、駐車場への物置の設置も良いでしょう。
物置があれば普段使わない物を収容できるからです。

例えば、スキー板のような大きな物の収納に向いています。

また、自動車用品を置いていれば、マイカーのメンテナンスにも使えます。

ただし、設置する物置は大きさに注意が必要です。
大きさによっては建築物となり、確認申請が必要となるからです。
あくまでも小型の物置に限定するべきでしょう。

旗竿地の駐車場の注意点

旗竿地の駐車場の注意点

旗竿地は特殊な形状である分、利用するには注意が必要です。

ここでは、旗竿地の駐車場の注意点を挙げてみましょう。

通路の幅を確保する

旗竿地は通路の幅の確保が必要です。

駐車場として使うためには、車幅と人の通れるだけの幅がなければいけません。
特に、火災などの災害の時には避難経路にもなりますので幅には注意が必要です。

また、車幅ギリギリだとドアの開閉に支障が出る場合があります。
乗り降りがしにくくなるので注意が必要です。

なお、植栽などでの装飾を考えるならば、植栽を設置するスペースも必要です。

ゲートは不向きな場合がある

旗竿地の駐車場の場合、ゲートが不向きな場合があります。
これは、ゲートには収納スペースが必要だからです。
ゲートの収納スペースを考えると、有効開口幅が狭くなることがあるのです。

例えば、伸縮門扉のようなゲートであっても収納スペースが必要ですし、跳ね上げ式であっても柱があるので有効開口部は狭くなってしまいます。

このようにして開口部が狭くなってしまうと、車の出し入れがしにくくなります。

駐車場まわりを確認する

駐車場のまわりの確認も必要です。
特に、隣家の設備の確認は重要になります。

例えば、ガス給湯器の有無です。
ガス給湯器は排気ガスを出すので注意が必要なのです。
ガス給湯器の排気ガスには窒素酸化物が含まれていることがあり、アルミ材の表面に悪影響を及ぼすことがあります。

このように、隣家の設備や駐車場のまわりの確認が必要になります。

植栽は成長も考慮する

植栽の配置は駐車場を飾る上で有用なのですが、植栽の配置は成長を考慮しなければいけません。
成長し過ぎると、駐車場にも影響することがあるのです。

ただ、車幅は狭くはできないので、実質的には人の通る部分を狭めてしまいます。

なお、人が通る部分は幅の確保が非常に大切です。

この部分は火災などの災害があった時の避難経路となります。

狭まると避難にも影響し得るので幅の確保は必要なのです。

防犯対策は不可欠

旗竿地は隣家に囲まれるケースが多く、物陰になる場所が比較的多いです。
そのため、防犯対策は非常に重要になります。

これは不審者が隠れる場所が多いためです。
敷地内に侵入した不審者は物陰に隠れながら犯行に及ぶことが多いです。

具体的な防犯対策としては、防犯カメラやセンサーライトなどの設置があります。

家屋の開口部にも対策が必要で、窓シャッターや面格子などの設置も望まれます。

隣家への配慮も忘れない

外構全般にも言えることなのですが、エクステリア製品を設置する場合には、隣家への配慮もしなければいけません。
こちらの工事によって、隣家の生活環境を犯してしまうケースがあるからです。

例えば、プライバシー保護のために高尺の目隠しフェンスを張った場合、隣家には日照と通風の点で迷惑を掛けるケースがあり得ます。

そして、状況にもよりますが隣家とのトラブルにも発展しかねません。
トラブルを避けるためにも自宅の都合だけでなく、隣家への影響も考えましょう。

まとめ

旗竿地の駐車場について取り上げました。

旗竿地の特徴やメリット・デメリットが把握できたことと思います。

また、駐車場の工夫の事例についてもイメージが膨らんだことでしょう。

旗竿地は形状が特殊な土地なので「使いにくい」と思えるかも知れませんが、扱い方次第によっては可能性の広がる土地とも言えます。