フェンスには様々な目的があります。

隣地境界の仕切り、防犯、プライバシー保護など、実に様々と言えるでしょう。

フェンスには高さのサイズが設定されています。

カタログを見ると分かるのですが、「H800」「H1000」といった記載がフェンスの高さがあります。

意味は「高さ800mm」「高さ1000mm(1m)」です。小刻みのサイズ設定にも見えるかも知れません。

それでは、フェンスの高さはどのように決めるべきなのでしょうか。

ここではフェンスの高さについて、目的別に挙げて解説します。

フェンスの外観による種類

フェンスの外観による種類

フェンスの高さを考える前に確認すべき点があります。

それはフェンスの外観による種類です。

高さを考える場合には素材の区別を考えるよりも外観を考える方がマッチするので、ここで再確認しましょう。

格子フェンス

まずは格子フェンスです。

格子フェンスにはアルミ形材・鋳物・ウッド・スチールなどがあります。

格子フェンスはフェンスとしてベーシックな外観であり、格子のデザインは、横格子・縦格子・クロス格子など実に様々です。

また、格子の太さやピッチなど異なるものも多いです。

ちなみに、格子フェンスは風を通します。

目隠しフェンス

目隠しフェンスはその名の通り、全面を隠すタイプのフェンスです。

風は通さず、フェンス本体で受けます。

素材としてはアルミ形材やウッドです。

目隠しフェンスにもデザインがあります。

部材を縦方向に組み合わせて縦格子をイメージさせたタイプ、横方向に組み合わせて横格子をイメージさせるタイプです。

メッシュフェンス

メッシュフェンスはスチールの線材を溶接して作った金網で構成するフェンスです。

カテゴリー的には格子フェンスに近いのですが、大きく違うのが線材の交点を溶接している点です。
これによって非常に高い強度を出します。

形状としてはシースルーで、風も通ります。

ちなみに、アルミ形材フェンスは格子部分を接合しているタイプはありますが、溶接しているものはありません。

ネットフェンス

ネットフェンスは樹脂を被覆した針金から作ったネットを構造材に張って構成したフェンスです。

形状としてはシースルーです。

強度はメッシュフェンスと違って溶接していないので、それほど高くはありません。

目的別のフェンスの条件と高さ

目的別のフェンスの条件と高さ

次に、目的別のフェンスの条件を挙げ、その高さについて取り上げます。

ただし、フェンスの目的はケースバイケースで非常に広いので、ここでは以下の項目に絞ります。

①隣地境界の仕切り
②防犯
③プライバシー保護
④転落防止
⑤装飾

それぞれについて解説しましょう。

目的1:隣地境界の仕切り

まずは隣地境界の仕切りです。

敷地と敷地の境界を明確化するためのフェンスです。

敷地の仕切りは一般的には境界標で確認されるのですが、境界標は目立たないので確認が簡単ではありません。

その点、フェンスで仕切ってしまえば隣地境界の仕切りは一目瞭然です。

では、この時のフェンスに求められる高さはどれくらいなのでしょうか。

必要とされる条件

このフェンスの目的は人の視覚に訴えなければいけないので、視野に入りやすくなくてはいけません。

ただ、逆に言うならば「視野に入れば高さにこだわりは必要ない」とも言えます。

高さの目安とおすすめの高さ

前述のように、この目的の場合は「人の視野に入れば十分」との判断があるので、高さは1.0~1.5m程度で十分と思われます。

おすすめなのは1.2mです。

この高さだとコンクリートブロックに施工するフェンスの標準高さになるので、デザインも選びやすいです。

ただし、マンションなどの公共の建物に設置するフェンスは高めの方がベターです。

1.8m程度が適当と思われます。

その他

フェンスには自立できるだけの強度が必要なのですが、一定以上高いフェンスになると強度を上げたタイプが必要です。

そのようなフェンスは支柱が太かったり中に補強材が入っていたりするので、値段が上がります。

また、1.8mレベルの高さになると控え柱が必要な場合があります。

控え柱を設置するスペースが必要なので、計画時には敷地に関しての注意が必要となるでしょう。

目的2:防犯

次に防犯目的のフェンスです。

フェンスが持つ防犯効果は窃盗などの侵入犯罪の予防と抑制と言えます。

つまり、フェンスによって侵入者に「入りにくい」と思わせて侵入を予防する効果です。

また、侵入者が実際に侵入しようとした時に「手間が掛かる」「発見されるかも知れない」と思わせて侵入を諦めさせる効果があります。

それでは、このような効果を持たせるためには、フェンスの高さはどれくらい必要なのでしょうか。

必要とされる条件

防犯のためには「侵入者への威嚇」が出来ているフェンスか、そして実際に「上りにくい構造」であるフェンスかが大きなポイントと言えるでしょう。

この場合は「人間が実際に上りにくい」だけの高さ、そして「乗り越えようとする行為が第三者に見えやすい」高さが必要条件です。

また、上りにくい構造としては高さの条件もありますが、それは格子の形状などの要素が濃くなります。

高さの目安とおすすめの高さ

この条件を満たすフェンスの高さですが、概ね1.5~1.8m程度。その中でもおすすめは1.5mです。

これは「上りにくさ」と「見つかりやすさ」の両立が可能な高さだからです。

まず上りにくさですが、フェンスは1.5mもあれば上がるのにもそれなりの時間が掛かります。
上る行動も発見されやすくなるのです。

また、1.5mであれば敷地に侵入後の侵入者の頭が外からも見えやすくなり、発見される可能性が高くなります。

このように、1.5mであれば2つの条件を満たすことが可能なのでおすすめです。

その他

上りにくい構造は格子の形状などの要素が濃くなります。

この条件の例はいくつもあるのですが、代表的なのが「手掛かり・足掛かりになりにくい形状」です。

例えば、横格子は格子が足掛かりになりやすいのに対し、縦格子は足掛かりになりにくいです。

また、フェンスの上端に剣先などが付いていれば、手掛かりとしては使えません。

他にも、メッシュフェンスのようにシースルーであれば、敷地内が見えやすくなるので、外からでも発見されやすくなります。

このように防犯は高さ以外にも条件があるので、その条件に合致する形状を組み込めば防犯性は向上します。

目的3:プライバシー保護

フェンスはプライバシー保護の効果を期待して建てられます。

例えば、フェンスを設置しないオープン外構であれば、敷地の外から居室内が見えてしまうかも知れません。

しかし、フェンスがあれば外から隠れるので室内は見えなくなります。

では、このような効果を持たせるためのフェンスの条件はどのようなものでしょうか。

必要とされる条件

フェンスにプライバシー保護を求めるのであれば、やはり高さを考えなければいけません。

歩行者から見えないようにする必要があるので、歩行者の視野を考えるべきでしょう。

また、敷地の外から見えなくするためには格子などにも条件が発生します。

高さの目安とおすすめの高さ

プライバシー保護のためには、概ね1.8~2.0mが目安となるでしょう。おすすめは1.8mです。

これは、日本人の身長が170cmくらいであるためです。
「1.8mもあれば視界を防げる」という計算の元からの数値です。

ただし、高さを考える場合には、どの部分を隠すかによって、必要となる高さが変わります。

例えば、敷地の外から隠す場合は人の身長が入る高さが必要なので1.8m程度です。
しかし、高い位置の視点から隠すなめには、もう少し高さがなくてはいけません。
2mクラスのフェンスが必要となるでしょう。

その他

プライバシー保護のためにはフェンスの形状も考えるべきです。

外から見えなくするためには目隠しフェンスが良いでしょう。

ただし、全部を隠す必要まで無い場合はスリットの入っているデザインでも良いと思われます。

目的4:転落防止

転落防止目的としてもフェンスは使われます。

良い例が擁壁部分に張られたフェンスです。

特に子供が通る可能性のある擁壁などは、子供の転落リスクを考慮しなければいけないので設置されます。

では、転落防止のためのフェンスは高さ条件がどのようになるのでしょうか。

必要とされる条件

転落防止のためには「乗り越えにくさ」と「くぐり抜けにくさ」の両立が必要です。

乗り越えにくさは子供がよじ登って超えられない高さで、くぐり抜けにくさとは格子の間をすり抜けないようにする条件と言えます。

小さい子供であれば乗り越えなくても、格子の間から落ちる可能性があるのです。

ちなみに、格子の間からすり抜けるリスクは、高さの条件よりも格子のデザインに関係するところが多いです。

高さの目安とおすすめの高さ

転落防止を考えるならば、よじ登りにくい高さを考えれば良いでしょう。

目安としては1.8~2.0mで、おすすめは2.0mです。

これは2.0mもあれば子供の運動能力を考えてもよじ登りにくいからです。

また、それくらいの高さがあれば「落ちたらどうしよう」という恐怖心を与える効果が期待でき、上る行動を抑制できます。

その他

転落防止を考えるならば「くぐり抜けにくさ」も考えなければいけません。

このヒントはフェンスではなく手すりの規格に隠されています。

以下の基準は国土交通省のホームページからのものです。転落防止用途の手すりには次の基準があります。

「高齢者の居住の安 定確保に関する法律施行規則第14条の2第5号の規定に基づき国土交通大臣の定める基準」「転落防止のための手すりの手すり子 で踏面の先端及び腰壁等(腰壁等の高さが650mm未満の場合に限る。)からの高さが800mm以内の部分に存するものの相互の間隔が、内法寸法で110mm以 下であること。」とあります。

つまり、安全確保のためには、格子と格子の隙間が110mm以下である必要があるのです。

なお、この基準はあくまでも手すりの基準です。

しかし、フェンスであっても転落防止を目的とするならば、この基準を参考にするべきと思われます。

目的5:装飾

装飾もフェンスに求められる機能の1つです。

エクステリアは住宅をスタイリッシュに飾りますが、その効果を発揮するのが門扉とフェンスです。

つまりフェンスにはデザイン性も求められるのです。

では、フェンスの高さとデザイン性はどのような関係があるのでしょうか。

必要とされる条件

デザイン性を考えるならば、フェンス1枚のサイズで考えても良いと思われます。

良い例がアルミ鋳物フェンスです。
ブロック塀への設置を前提にしてはいるのですが、サイズとしてはそれほど高くはありません。

ただし、公共用のエクステリアの場合は違った例もあります。

例えば、裁判所のような権威性を持たせた建築物のフェンスです。

このようなフェンスの場合はデザイン性に合わせて「威厳」などの表現も要求されます。

その場合のフェンスには高さとデザインの両方が必要です。

高さの目安とおすすめの高さ

前述のように、フェンスを見せるのであればフェンスの高さは1.0~1.2m程度が目安になるでしょう。
おすすめは1.2mです。

これは身長を考慮してのことです。
身長が150~170cmと仮定すれば、1.2m程度が目に入りやすいです。
ブロック塀込みで1.2m程度がおすすめです。

また、公共用エクステリアの場合は一般の建物であれば1.2m程度でも良いのですが、権威性を持たせるのであれば「見上げる」ことも必要となるので、1.8~2.0m程度は欲しいです。

その他

デザイン性をメインの目的とするならば、使えるフェンスはグッと増えます。

例えば、アルミ鋳物フェンスなどはエクステリアメーカー各社が幅広い商品群を持っています。

デザインを優先させるならば、まさに「選び放題」とも言えるでしょう。
住宅のデザインに合わせて選べると思われます。

また、フェンスにはロートアイアンのような一品ものもあります。

オリジナリティを追求するのであれば、そのようなフェンスもおすすめです。

フェンスの高さを決める上での知識

フェンスの高さを決める上での知識

ここまでフェンスに求められる条件からの高さ設定について述べて来ました。

高さの決定要因を取り上げましたが、決定する理由はそれだけではありません。

フェンス設置の前提とも言える条件があるのです。

では、どのような条件があるのでしょうか。

フェンスの高さ制限

フェンスの高さには制限があります。
以下は「公益社団法人 日本エクステリア建設業協会」のホームページからの抜粋です。

①塀の高さ:2.2m以下とする(普通土の場合1.8m以下とする)。
②連続フェンス塀:腰壁は1.2m以下とし全高さは2.2m以下とする。

これにより、ブロック塀とフェンスの高さが算出されます。

フェンスの外力と破壊について

フェンスは立っているだけに見えるかも知れません。

しかし、フェンスにも様々な外力が加わります。
当然ながら、それらの外力に耐えなければいけません。

これにはフェンス高さも大きく関わります。

では、フェンスに加わる外力にはどのようなものがあるのでしょうか。

また、どのような破壊があるのでしょうか。

フェンスに加わる外力

高さを考える際にはフェンスに加わる外力について検討するべきでしょう。
フェンスに加わる外力には次の物があります。

①鉛直荷重:主に人がフェンスに上った時に発生する外力。上から下に作用します。
②水平荷重:主に横からの外力です。横から集中的に掛かる場合と分散して加わる場合があります。
③衝撃荷重:重量物がフェンスに衝突した場合の外力です。

それぞれによって破壊・変形が変わります。

次の項からそれぞれの外力について解説しましょう。

鉛直荷重による破壊・変形

まずは鉛直荷重を挙げましょう。

これは「人が上った場合」の想定が適切です。

人がフェンスに上った場合の外力ですが、1人でフェンスに上って集中的に加わる場合と、複数人で上って分散して加わる場合があります。
両者では力の加わり方が完全に異なります。

この場合、集中的に加わった方が発生する力は強いです。
そのため、1人の方が壊れやすくなります。

例えば、重さ75kgの大人が乗った場合と25kgの子供が3人乗った場合では、荷重そのものは同じですが、75kgの大人の方が力は集中して加わるので破壊しやすくなります。

なお、これは高さとの関係はケースバイケースです。
フェンスが高い方が上った時の揺れが大きくなりますし、小さい場合はフェンス本体の破損リスクが大きくなります。

水平荷重による破壊(フェンス本体)

フェンスには水平方向からの外力も加わります。
この力を受けるのはフェンスの本体部分と柱です。

フェンスの本体には力の加わり方が2通りあります。
これは鉛直荷重と同様に「集中して加わる力」と「分散して加わる力」です。

集中して加わる場合の代表例は人が寄りかかった時などで、分散して加わる力は風による風圧力です。
これも鉛直荷重と同じように集中して加わる方が強いです。

しかし、実際的には人が寄りかかった時よりも、台風や春一番の時に発生する風圧力の方が圧倒的に強く、等分布であったとしても強風が吹けば破壊します。

ちなみに、フェンスの水平荷重と破壊は高さが高いほど不利でしょう。

これはフェンスの高さが高ければ、フェンス本体の風圧力の加わる面積が増えるためです。
高さが1.0mのフェンスと1.2mのフェンスを比較すれば、単純計算で風の受圧面積は1.2倍に増えます。

外力がそれだけ増えれば部材が耐えきれなくなるリスクが高まり、破壊するのです。

水平荷重による破壊(柱)

柱はフェンス本体を支持する部材です。

そのため、フェンスの柱はフェンス全体に加わる力を耐えなければいけません。
フェンスが高ければ高いほど破壊しやすくなります。

これは先に挙げたフェンス本体の面積のためです。
フェンスが高くなると本体部分の面積が増え、柱に加わる力も増加するのです。

ちなみに、支柱に加わる曲げの力はフェンス本体に加わる曲げの力と作用が異なります。
柱の方が不利で壊れやすいです。

衝撃荷重による破壊

衝撃荷重は重量物が衝突した場合の外力です。
何がどの位置にぶつかったかで違います。

例えば、自転車がフェンス本体の中央部にぶつかった場合と、柱の部分にぶつかった場合では力の加わり方が異なります。

フェンス本体に衝突した場合にはフェンス本体が、柱部分に破損した場合には柱が破壊することでしょう。

また、高さに関してはフェンスが高い方が柱の破損リスクが高くなります。

ちなみに、衝突はぶつかるスピードによっても異なります。
漕いでスピードの出ている自転車と遅い自転車では速い自転車の方が強烈で、破壊のリスクは高くなるでしょう。

補強材の影響

アルミ形材フェンスの場合には材料が中空のため、内部に補強材を仕込まれます。

良く行われるのがスチール製の補強材を支柱に挿入して固定するパターンです。
スチールはアルミよりも強度の高い金属なので破壊しにくくなるのです。

しかし、いくら破壊しにくくなると言ってもスチール補強材にも限界があります。
外力が限界を超えると破壊するのです。

ちなみに、支柱の場合には破壊する部分が違うケースもあります。

補強材を入れない場合だと柱の根本で座屈するのに対して、補強材入りの場合は柱の途中で折れることもあるのです。

まとめ

フェンスと高さについて取り上げました。

目的に合わせたフェンスの高さやおすすめの高さが把握できたことと思います。

また、高さに関する周辺知識も得られたのではないでしょうか。

フェンスは適切な高さを選ばなければいけません。

設置の目的を明確にし、それに合う高さの設定をしましょう。